プラスチックを「破壊せずに」劣化を検査する方法が開発される

  • 従来のプラスチック劣化状態の評価方法
  • ポリプロピレンの非破壊検査
  • 非破壊によるプラスチックの劣化検査のメリット


従来のプラスチック劣化状態の評価方法


従来「プラスチックがどの程度劣化しているか?」を評価する方法は、機械試験による試料の破壊が必要不可欠でした。
試料となるプラスチックを機械によって引っ張り、どの程度の力で破壊されるかによって劣化度合いを評価するという方法です(劣化が進むとあまり伸びないため、どの程度の短さで破壊されるかによって劣化具合を検査していた)。


その特性上、機械などの部品として使用されているプラスチックを、分解せずに劣化度合いを検査することはできませんでした。




ポリプロピレンの非破壊検査


そんな中、2020年7月にポリプロピレンを非破壊の手段で劣化度合いを評価する方法が開発されました。
その方法は、ある領域の近赤外線を照射するという方法です。


一定の領域の近赤外線光を照射し、ポリプロピレンを透過した近赤外線をセンサーで検出し、近赤外スペクトルを計測する流れになります。
仕組みとしては、ポリプロピレンが「劣化が進むことで近赤外光の吸収特性が変化する」という特性を持つことを利用したもので、透過後に検出された近赤外スペクトルの計上によってポリプロピレンの劣化度合いを推定するというものです。




非破壊によるプラスチックの劣化検査のメリット


非破壊によるプラスチックの劣化度合いの検査方法が実用化されたことにより、さまざまなメリットがもたらされました。
まず「パーツを使用中のまま検査できる」ということです。


従来の機械検査では、プラスチックパーツを引っ張るために、パーツを対象物から取り外す必要がありました。
新しい検査方法では光を照射することで検査するため、パーツを使用中の形態のまま検査できるというメリットがあるのです。
2つ目のメリットは「パーツを破壊せずに継続使用できる」ということです。


引っ張る機械検査はプラスチックパーツを破壊してしまうため、その後は継続的に使用することはできませんでした。
新しい検査方法では検査対象となるプラスチックパーツが形状を保ったままであるため、その後も継続使用できます。
使用中のパーツとしてだけでなく、リサイクルされる予定のプラスチックパーツの選定にも使用できるというメリットがあるのです。